2020年 水産エコラベル ミニワークショップの概要について(第22回ジャパン・インターナショナル・シーフードショーセミナー)


開催(第22回インターナショナル・シーフードショー東京同時開催)

  1. 日 時:2020年9月30日(水)13時00分より
  2. 場 所:東京ビッグサイト南展示棟 南1-商談室(4)
  3. 主 催:一般社団法人大日本水産会
  4. 参加者:23名

内 容(概要)

開会 MEL協議会 冠野尚教事務局長が司会となり開会。

開会挨拶

  1. 主催者挨拶 (一社)大日本水産会の長岡英典常務理事が本開催の経緯に触れ、参加者への感謝と期待を述べた。
  2. 来賓挨拶 水産庁の倉重泰彦漁政部長が、開催のお祝い、行政としての水産エコラベル支援の姿勢とその活用及び本ワークショップでの活発な議論を期待する旨述べられた。

基 調 講 演

講師   横浜国立大学 松田裕之教授
テーマ 「ポストコロナ時代の新常態と水産エコラベル」

講演概要

①新型コロナ禍において
日本においては「日本型コモンズ」による自主管理がコロナ禍拡大を今のところ抑制している。SDGs(2030年目標)の後の議論は既に始まっている。コロナ禍はテレワークなど新しい状況への移行を早める契機になったと説明し、
②コロナ禍後における社会においては
持続可能な漁業だけでなくSDGs全般に配慮するために、水産エコラベル(MEL認証)が生産者と消費者その橋渡しを担うべきとした。

MELの近況報告

報告者 (一社)マリンエコラベルジャパン協議会 垣添直也会長

報告概要

①GSSI承認後の課題
・年次審査(MOCA)、GSSIのベンチマークツール改訂への対応
・上記に沿ったガバナンスの強化、認証数の増大、会員と支援者の拡大、相互認証と海外進出の研究
②認証の現状
・9月末現在65件(漁業5、養殖30、CoC30)
・認証魚種14種、生産量10万4千トン(推定)
上記説明の上、ポストコロナの社会においては、多様、持続可能、復元可能または順応性が更に求められることから、MELは「多様で持続可能な水産業」を目指し、社会に役立ちたいと述べた。

ディスカッション

テーマ 「ポストコロナ社会における水産エコラベルの価値と役割とは」
座長   横浜国立大学 松田裕之教授
概要   以下

水産エコラベルの更なる普及への課題

対消費者
・水産エコラベルは既に定着した「安心安全」に加わるもの。特に若い女性が反応する。
・大衆向けの売れ筋商品にラベルが付けば、普及、認知度向上に貢献する。
・店頭にラベルの付いた商品が並ぶことが大事であり、MELには日本の水産業の特長を生かした制度になって欲しい。
・IUUの排除、トレーサビリティーの確保にも有用だが、普及、認知向上にはマーケットの協力が不可欠。川下(仲卸以降、消費者)までつながる仕組みを考えるべき。
・卸売市場(豊洲)は安心安全、衛生面が画期的に改善された。行政からもIUU排除徹底の方向が示されており、水産エコラベルも取得し積極的に資源管理に取り組んで行く。従い、認証水産物をもっと増やして欲しい。
・仲卸としてもこれからトレーサビリティーや資源管理に取り組んで行く。
・水産エコラベルの価値を伝えるPRが必要。


教育
・資源や環境保全に対する意識の向上、そして水産エコラベルの普及のためには教育が必要。特に児童に対する教育が重要。
・主婦が魚や商品を選ぶ基準は、鮮度、産地、添加物そして値段だったが、変化してきている。(無添加、無着色等健康や環境を重視するようになった)

コスト負担
・認証取得のメリット享受、あるいは認証コストの負担をどうするかが重要。今は生産者側の負担が大きいが、消費者側も負担すべき。
・機関投資家が、SDGsへの取組状況を投資や融資の判断材料としてきている。これはファイナンス上の利点である。

ポストコロナほか

・市場へのアピール、制度の普及には認証魚種の拡大が必要。そのためにも日本の水産業の特長である多様性を踏まえた水産エコラベルの制度であるべき。
・SDGsの考え方が企業価値を高める。更に社会構造は変化し、取引が更にオープンとなるだろう。
・消費者はゲノム編集等技術革新に理解が付いていかず、何が安心なのかも不明で困惑する。第三者として信頼を提供する、それがエコラベル認証かと思われる。
・上記に関し、水産エコラベルは専門家が担保する信頼に足る制度である一方、審査の透明性も問われる。このためにISOの概念に基づく第3者による認証制度の認定
・異議申し立てへの対応が国際的にも透明性を保証するものである一方で、認証コストの増大にも繋がる。
・認証の普及、認知度の向上あるいは輸出の拡大には海外スキームとの連携が重要。
・流通の皆さんからの声として、認証製品がスムーズに市場に行き渡るためにはスキーム同士のCoCの共有化を考えた方が良いのではないか。
・(家形氏)RFMのスキームオーナーはASMIから別の独立機関に変わり、アイスランドやノルウェーのスキームとの連携を視野に入れている。
各スキームにはそれぞれの方針があるので共有化は簡単ではないが、消費者に近い立場からの声として受け止め、スキーム事務局に伝える。

座長総括


・水産エコラベルの取得普及の鍵は流通が握っていると思われるも、ESGの観点からもファイナンス上の利点となることは興味深く、普及の駆動力になることを期待する。
総じて、国際的な視点でメリットがあることを生産者側に伝えていく必要があると共に教育も重要である。
・各スキームは同じ認証制度である必要はない。日本の新しい資源管理と自主的に資源管理を行っているケース、姿勢を評価したい。
・認証基準は多様でも構わないが、透明性は守る必要がある。CoCはそれぞれの認証品を取り扱う、消費者はそれを選択するが、ラベルの意味、中身を知らせることが大切。
・小規模事業者でも認証制度を志向しているケースもあり、生産者、消費者それぞれがコストを負担する仕組みが望ましい。
・東日本大震災の後の復興とは文字通り元に戻ることではない。ニューノーマルという言葉はリーマンショック後によく使われたという。ポストコロナ社会も単にコロナ禍前に戻るのではなく、コロナ禍を契機として新たな常態に移ると考えた方が良い。
・エコラベルの視点では、国内向けと輸出は一緒に考える必要はないが、それぞれメリハリをつけて捉えるべきかと感じる。輸出を志向し、水産業は成長産業となったが、庶民は買えなくなったでは困る。
高く売れる魚はそのように売れば良いが、皆が食べられるようにもすべき。

以上

事務局からは、本議論で提起された話題を切り口として、今後皆様と議論を深め、
水産エコラベルがポストコロナの社会のお役にたてる様頑張ることが表明されました。