米国政府は、去る6月28日、昨年12月21日、制定した「サメヒレ採捕禁止法」を実施するための「規則案」を官報で告示し、7月30日までに一般からの意見の提出を求めた。同規則案は、米国200海里水域内でのサメヒレ採捕の禁止、サメヒレのみの船上保持・陸揚げの禁止等を規定。ホノルル、グアム等、米国の港に補給入港する日本のマグロ延縄漁船など、外国漁船についても規則の対象とするものである。
大日本水産会は、300種以上もあるサメ資源の情況について、科学的検討も為されないままに、正当な漁業行為の一貫であるサメヒレ採捕を妥当な根拠も無く禁止するのは、FAOのイニシアティブにより合理的な資源保存・管理を目的とする国際行動計画の推進に逆行するばかりでなく、国際社会において確立した原則である水産資源の持続的利用を恣意的に阻むものであるとの立場で、関係団体と協議し、米国政府に意見書(別添)を送付した。また、同法は、サメヒレ採捕の禁止を国際的に広げることを規定していることから、ICFA(国際水産団体連合)、IWMC(国際野生生物管理連盟)、GGT(自然資源保存協会)等の内外のNGOとも連携し、各々米国政府に意見書を送付した。本会は更に、公海上で外国漁船がサメヒレを採捕し船上に保持して米国の港に入港し陸揚げすることをこの規則で禁止することが国際法上問題であることを米国のコンサルタントに法的に分析させ、別途コメントを作成し、提出した。
大水意見書骨子
- サメヒレ採捕禁止法に次の理由で反対。ア)水産資源の保存・管理に関する確立した国際ルールを無視。イ)科学的合理性、正当な根拠無し。ウ)FAOのサメ資源保存・管理努力を減殺。エ)水産資源の持続的利用を不当に阻害。
- 米国港に入港する外国漁船に対する適用免除(検査免除を含む)すべきである。
ICFA(国際水産団体連合)意見書骨子
- サメヒレ採捕禁止法に科学的根拠無く、反対。サメヒレ採捕は資源の浪費ではない。漁獲物の一部利用は漁業にとって一般的行為。
サメヒレ採捕は資源管理問題ではなく、資源利用の方法の問題であり、同法は作成の趣旨に基本的誤りがある。
- 同法の実施は、水産資源の持続的利用を阻む悪例となる。混獲物の有効利用も阻害し、その実態把握も困難となる。
- 外国漁船への適用はWTOルール違反の懸念あり。外国漁船のサメヒレ船上保持、米国港での転載を認めるべき。
- サメヒレ採捕の国際禁止不必要。合理的根拠無し。ICFA会員は自国政府に対し、米国政府の慫慂を拒絶するよう要請することとする。
GGT意見書骨子
- サメは約380種あり。昨年のIUCNレッドリストによれば、絶滅に瀕している種は一種のみ。危機的情況にあるのは7種、要注意が14種。即ち、大部分のサメ資源は危機的状態にはない。資源管理措置は種別に検討するべきである。
- 米国のサメヒレ採捕禁止法は、国内へのサメヒレ輸入を禁止もせず、国内需要も抑制せず、サメヒレ採捕の国際禁止の実行を規定。大いなる矛盾である。
- 規則の実行は、米領サモア、グアム等の零細漁業者に対し経済的な悪影響を及ぼす。
- 同法の廃止または実施中止とすべき。
以上
別添:米国サメヒレ採捕施行規則案に関する日本業界のコメント |