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大日本水産会
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BUTTON 米国サメヒレ採捕施行規則案に関する日本業界のコメント
2001年7月26日
大日本水産会

1. 原則論
本規則案は、米国サメヒレ採捕禁止法を施行するものであるが、同法は科学的な根拠を欠いており、不合理であり、かつ以下の理由から、問題がある、よって、その法を実施する規則案は、そのまま実施すれば、米国が、真剣にサメ資源保存・保護を推進しようとする意図を損なうことになることを懸念する。更には、米国の水産資源の持続的利用を擁護する立場について国際社会に不信感を与えることになることを懸念する。米国政府当局(海洋漁業局)が、同法を施行する義務を負う立場にあることを理解するが、本会は、同法に反対するものであることをここに明確にするものである。

1) 同法は、水産資源の保存・管理に関する確立した国際ルールを無視している。 即ち、水産資源の保存・管理は、資源の持続的利用を確保することを目的として実施される。この目的を実現するには、その実施は、客観的、正当な根拠に基づき、措置は合理的、実際的なものでなければならない。かかるルールの厳守が無ければ、不合理な保存・管理措置が導入されることとなり、水産資源の持続的利用が不当に阻害されることとなる。

サメは沿岸、沖合いまで広い海域に生息、その種類は300種以上もある。FAO 技術報告書(No.389)は、特定種を除き、サメの生物学的情報、資源情況など不明であると述べている。かかる情況の下で、一般に全てのサメのヒレ採捕を禁止するのは、余りに客観的、合理的な根拠を欠くものであり、従って、正当性は無い。

事実、日本の水産研究者の報告によれば、遠洋延縄漁船に混獲されるヨシキリサメのCPUEは近年、安定しており、資源情況は安定している。

また、サメヒレ採捕が、一般に混獲されたサメを対象として行われている事実に留意すれば、サメヒレ採捕がサメ資源全般に影響を与えているとの断定は科学的合理性を欠いており、正当な根拠は見出せない。従って、サメヒレ採捕の全面禁止が、サメ資源の保存管理上、合理的な措置であるとは言い難い。
2)同法は、米国政府も同意しているFAOによるサメ資源保存管理の推進の努力を減殺するものである。FAOは包括的に資源保存管理を推進している。サメヒレ採捕のみを問題として取り上げて規制することの妥当性は甚だしく疑問であり、各種サメ類の資源情況を把握し、漁業者の協力を得つつ、合理的かつ包括的な資源管理を推進しようとするFAOの努力に反するものである。そればかりでなく、サメ資源の適正な保存管理措置の導入普及を歪めるものである。
3)正当な根拠無く、不合理な規制を実施することは、水産資源の持続的利用を不当 に規制することにつながる。これは国際社会における普遍的な理念を否定するものである。水産資源の持続的利用と適切な保存管理に関して国際社会のリーダーとしての役割を果たすべき米国のとるべき態度ではない。


2. 各論

1) 米国港に補給入港する外国漁船については、本規則の適用除外とすることを明記すべきである。
理由:米国管轄水域外で操業する外国漁船について、米国管轄水域を無害航行中または米国港に寄港中、本規則を適用することは、米国の管轄権を、米国管轄水域外の行動に対しても、実際に行使することと等しく国際法上、問題である。
更に、公海上のサメ類に対し実施されている有効な資源保存管理に矛盾する行為でもある。
また、仮に規則が外国漁船に適用されることとなれば、米国への入港を回避する船が生じることとなり、その結果、入港経費が減少することとなる。この結果、米国の関係港の多くの市が、不合理な経済的損失を強いられることとなる。
2)仮に規則案の修正が行なわれず、外国漁船に規則が適用される場合にあっても、本規則にかかわる検査は外国漁船には免除されるべきである。そもそも、米国管轄水域内で操業を一切しない外国漁船について、本件規則にかかる検査を実施する妥当性は無い。
3)無駄な、スポーツ精神に反するサメヒレ採捕獲行為(補足情報の項目に明記されている)の表現に異議がある。適切な修整を求める。
理由:サメヒレ採捕を無駄と断定する正当性は見当たらない。むしろ、不要な混獲物の有効利用の行為と考える。従って、当該種の資源情況が健全であれば、これを禁止する妥当な理由は無い。また、そもそも、魚は、その一部分を使用する物が多い。頭の先から尻尾まで全てを利用するものはない。そもそも無駄とは何か、明確な定義無しに、情緒的な判断を根拠とし、一般者を誘導するかの如き表現は不適切である。
スポーツ精神とは何か。漁業者精神からすれば、伝統的に行なってきたサメヒレ採捕を妥当な理由も無く、否定しさることこそがフェアプレーを尊重するスポーツ精神に反すると考える。
4)提案された措置の影響の評価の項目において、重要な視点が欠落している。米国が水産資源管理について、世界の指導者として役割を果たす立場にある以上、米国の措置が他の国に与える影響は大きくそのことを評価せずして決断することは適切でない。まして、その実施する規則の客観的合理性について疑問がある場合においては、なおさらである。米国に対する国際社会の信頼に応えるためにも、規則案についてかかる視点から、FAO,各資源保護管理管理機関、関係国政府等と充分に協議したうえで、決定すべきであり、かかる評価をせずに規則を実施することには無理があると考える。規則の実施を再検討するよう求める。
(以 上)