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「ひたちいきいき百年塾産業部会」に年度賞 水産ジャーナリストの会が選定 アンコウなど地元水産物の"地産地消"運動を評価 |
水産ジャーナリストの会では毎年水産業の振興に功績のあった団体・個人に年度賞を贈って表彰しているが、17年度は茨城県日立市で地産地消の手法を導入し、地元水産物の販売促進に貢献した「ひたちいきいき百年塾産業部会」(森秀男部会長)と同県漁業士会の小泉光彦前会長を選定し、2月2日に小林芳雄水産庁長官、中須勇雄大水会長が出席して開催された定時総会で年度賞を授与した。
日立市ではグローバリズムと景気の後退で企業城下町としての将来に陰りが見えてきたため、市民生活に新たな活気を取戻そうと議論を重ねた結果、固有資産としての漁港、水産物に着目した。同市は工業都市として歩んできたが、沖合には暖流と寒流が交差する好漁場をもち、南北24キロの海岸線には久慈町漁協をはじめ5つの漁協と4つの漁港があり、年間5,400トンの水揚げがある水産都市でもあった。 日立商工会議所は地域活性化対策として5つのプロジェクトをスタートさせ、その一つに「地産地消運動プロジェクト」があった。地元産の水産物で活気を取戻そうというアイデアだ。運動推進のため会議所の定款を変更し、一次産業の事業所も会員として迎え入れ、1998年に百年塾産業部会を結成し、会議所、漁協、旅館・飲食業が三位一体となる協調体制を整えた。さらに、プロジェクトの推進役として茨城県漁業士会の小泉光彦前会長が加わった。 真っ先に着手したのがプロジェクトのシンボルとなったアンコウの活用だ。「口福(こうふく)アンコウを広める会」を組織し36会員の店に口福アンコウの幟を掲げ、アンコウに合う酒を開発したり、歌や踊りも創作してPRを始めた。まず、市民に地元水産物の魅力を知ってもらい、次いで駅や漁港周辺の飲食店が"久慈浜産・特製アンコウ鍋"を観光客に売り込んだ結果、日立へのパック旅行が企画されるなどの成果を上げた。将来はアンコウ先進地の大洗と北茨城を結ぶ線に加わり「常磐アンコウロード」を結成する遠大な計画も浮上している。 推進役の小泉氏は、自著「海の恵みに生きる−地域水産業の再生を目指して−」の中で漁業の将来の可能性に想いを馳せながら「漁業は獲るだけで経済活動をタブー視し、消費者の理解を得られない産業になった。今後は市民との交流を続け、水産業の大切さを訴えて漁業者の地位向上を図り、サービス産業の意識を持った第4次産業を目指すべきだ」と述べている。 |