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魚価支持制度の導入、市場機能の再評価を提唱 大水・業際懇で木幡水土舎社顧問が講演 |
大日本水産会は1月26日午後業際懇談会を開催し、(株)水土舎の木幡孜顧問から「輸入7品目に駆逐される国産魚介類」と題する講演を聞いた。木幡氏は講演の中で「輸入魚の増大で国内魚価は2度にわたり価格破壊され、漁業そのものも崩壊の危機にある」と指摘し、その打開策として「魚価支持制度導入、魚市場機能の再評価、輸入魚規制を実施し、正常な需給バランスを回復すべきだ」と強調した。講演概要は以下の通り。
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地元の小田原をはじめ富山湾、大王崎、明石海峡などで話を聞くと、魚価が暴落して漁業不況が叫ばれている。魚価の低下はエビ、マグロ、サケ・マス、カニ、イカ、タコ、ウナギなど輸入魚が氾濫し、国産高価格魚介類の値を押し下げたためで、同時に魚介類自給率の異常な低下も招いている。
自給率の低下は漁獲量が急増した1965年前後から始まり、78年に100%を割り、2000年に53%にまで落込んだ。昭和55年以前の魚食時代は年間1人当たりの魚介類消費は40キロ台で推移したが、55年以降の魚離れ時代は逆に70キロ前後と消費が増え、魚食時代の1.5倍となった。魚離れ時代は大量の売れ残りや残飯など無駄な消費が増加したためだ。3食魚を食べる北欧の魚食大国でさえ年間1人40キロを食べているに過ぎず、日本も無駄を省けば100%の自給率が可能となる。 生産状況では沖合・遠洋漁業の漁獲量が過去40年間大きな増減を繰り返し、今や最盛時に比べ半減した。これはマイワシ1種の減産によるもので、サバ、スケトウを加えた食料利用率の低い多獲魚を除くと漁獲量は極めて安定している。沿岸漁業も定置の長期的な増産もあって総量は横ばいないし増大している。将来の生産量増大は養殖−特に餌を使用しないノリ、ワカメなど無給餌養殖で増産の可能性が大きく、中国の驚異的な増産も無給餌養殖によるもので、多くの餌を必要とする給餌養殖は食料生産の担い手にはなり得ない。 国内の生鮮・冷凍魚介類の正常な消費限界は300万トン程度であるにも拘らず、94年に300万トンを超えた輸入魚の増大は、70年と80年の2度にわたり国産魚の価格を大きく破壊し、漁業の経営体質に決定的なダメージを与えた。しかも驚くのは82年にキロ2,169円で15万8千トン輸入されたエビが、2000年には1,256円と価格を58%も下げながら輸入量が26万トンと65%も増加したことだ。つまり輸入魚は価格を下げつつ数量は消費限界をはるかに超える400万トンに迫り、国内漁業そのものが崩壊の危機にある。 この現状からの復活策としては、国として明確な食糧戦略を構築し(1)生産者魚価支持制度の導入(2)魚市場機能の改善と再評価(3)魚介類輸入の規制−を推進する必要があるのではないか。欧米では食料を戦略物資として位置づけ、一次産業保護のため市場価格と設定した目標価格との差額を補助する制度があり、日本でもこうした制度の導入を真剣に考えるべきだ。 |