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大日本水産会
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大水ニュースレター
第723号

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中須大水会長が理事会で強調

大日本水産会は10月9日午前、第133回理事会を開催し、今年度上半期の事業実施状況を報告し了承を得た。冒頭挨拶した中須勇雄会長は当面する最大課題の燃油高騰問題で「中小漁業者が身を切る覚悟で取組む必要がある」と強調した。

中須会長の挨拶概要次の通り。
最近の水産物需給をみると大きな変化があり、世界の市場で水産物価格が上昇している。資源の関係から供給量は減少気味だが、需要は健康志向もあってむしろ拡大し、その結果、価格が上がって日本がセリ負けるケースもあり、この傾向は今後も続こう。

それに比べ、国内の水産物価格は低迷し、世界の市場動向とは正反対で、消費も減少気味となっている。国産の漁獲物が市場にマッチしておらず、外国の市場と切り離され、内外水産物動向の大きなギャップが低迷の要因となっている。

〔燃油対策〕当面する課題としては燃油の高騰がある。中小漁業経営調査の結果では15年度の10トン以上の漁船漁業の経営は平均280万円のマイナスとなっている。ところが燃油価格の上昇で経費が800万円〜1千万円増加し、1経営体平均で1千万円から1千2百万円のマイナスが生じ、赤字は水揚金額の1割に達する。

燃油高騰の打撃は遠洋カツオ・マグロ漁業が最も大きく、燃油の高騰で経費が1隻当たり1億7千万〜1億9千万円にふくらみ、2千万〜3千万円の赤字が見込まれ、漁業が継続できるかの危機に立たされている。解決には当面の対策と中長期に分けた対策が必要で、日鰹連では現状で生き残りが可能か、縮小、再生を仮定して議論を進めている。

政治の場でも対策が検討され、明確な方向付けを期待すると同時に、今のままで漁業を続けられるか、業種ごとに思い切った再編策あるいは縮小策を検討することで政府の支援も可能になる。中小漁業が身を切る覚悟で取組むことが必要で、勿論大水も議論に加わり先頭に立ち政府へ働きかけ中長期の対策を考えたい。

〔安全・安心対策〕漁業の分野では魚介類に蓄積されるメチル水銀摂食基準の見直しと残留農薬・動物用医薬品の規制措置の2つの問題があった。水銀問題では11月2日に厚労省が妊婦の魚介類摂食指導で最終結論を出した。大水は事前に厚労省、食品安全委員会に対し、内容の発表に当たっては風評被害などが生じぬよう慎重な対応を要請した結果、外部への発表が慎重に配慮され前回のような風評被害は防ぐことが出来た。残留農薬の規制ではネガティブ・リストからポジティブ・リストへの移行が決まり、来年5月末から施行される。過剰な規制につながる懸念もあるが、問題が起きぬよう世論も納得した形での軟着陸を期待したい。

〔WTO対策〕12月の香港での閣僚会議で、大枠の方向付けがまとまる段階を迎えた。現時点で農業分野、非農産物分野の交渉とも結論が出ていない。関税引下げ問題では先進国と途上国で差をつける案があるが、その先をどうするか、どの程度引下げるか、分野別障壁の撤廃では水産物を含むのかも未定で、水産としてはいきなりゼロは無理と思っており、いずれにしても状況は厳しい。