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大日本水産会
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大水ニュースレター
第717号

BUTTON 福井県・小浜市が「食育」を理念にまちづくり BUTTON
水産など一次産業振興にも一役

福井県小浜市の村上利夫市長が9月26日、大日本水産会会議室で開かれた水産ジャーナリストの会で同市が13年度から取組んでいる「市民が主役  食のまちづくり」について講演した。村上市長はその中で、「地元産の農林水産物を活用したまちづくりに取組んだ結果、地域再生、観光交流などの面で成果をあげつつあり、今後環境問題の啓発、食料関連産業の振興に結び付けたい」と意欲を示した。まちづくりを含む同市の総合計画は今年3月内閣府による「地域再生計画」の認定をうけ、鳥取県の片山善博知事も絶賛、まちづくりの成功モデルとして41の自治体が視察に訪れている。

村上市長は県の農林水産部長を経て平成12年に市長に当選し、現在2期目。当選後の平成13年に公約に掲げた小浜市「食のまちづくり」条例を制定し、市と市民が一体となった新たな町づくりに着手。16年に当時としては先進的な"食育"をキーワードとする御食国(みけつくに)若狭おばま「食育文化都市」を宣言し、本格的な事業を開始した。

まちづくりの推進に当たり大分県・湯布院、小樽など各地の事例を視察し、その結果地元特有の歴史、文化、風土に根ざした取組みが成功の要因であることが判明。小浜も歴史が古く206件もの文化財があるほか、かつては伊勢、志摩、淡路島と並び朝廷に食料を供給する国であり、朝廷の料理人も輩出したりと食の様々な分野に係わりを持ってきた。加えてリアス式海岸を生かした水産業、コシヒカリを生産する農業、初春の行事である「お水取り」に使う名水の産地でもあり、豊かな伝統と地元の優れた産物に恵まれ、こうした利点を生かした文字通り地産地消型のまちづくりが始った。

実践活動では市民が主役で、市が3年間にわたり1地区当たり50万円の自由に使える補助金を出し、12地区の委員会が実施計画を作成した。15年には活動の拠点となる「食文化館」を建設、食の研究家として著名な石毛直道前民族博物館館長が指導に当たり、料理、道具、作法を核とする食文化を指導し、食をテーマにした様々なイベントには開館以来40万人が来館、いずれのイベントも好評を博している。

小浜市には福井県立大学の海洋生物資源学科、国と県の栽培漁業センター、小浜水産高校など水産関係の研究機関、教育機関があり、産官学がまちづくりと連携し、サバ寿司の国産化、クラゲからコラーゲンの抽出、フグの高品質化など様々な水産関係の研究も行なっている。

今後の活動として村上市長は、「食のまちにふさわしい健康づくり、食料関連産業の振興、水産加工食品の開発を進め、将来的には同様の活動を行なっている他の都市に呼びかけ、"食の友好都市宣言""全国食サミット"などを通じ、食を行政の柱に位置づける運動を展開したい」と抱負を語っている。