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大日本水産会
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2001年4月13日
大日本水産会 漁政部企画課長 松沢 正明

 4月早々に「産地市場の統合並びに経営合理化に関する方針」(国の方針)が示された。漁獲量の低迷や市場外流通の増大などで、産地市場の抱えている経営問題は重大、且つ深刻である。大日本水産会は平成12年度において「水産物産地流通効率化支援事業」を行ない、釧路地区、釜石大船渡地区、境港地区の3箇所において「水産物の新商品・新販路開拓と新しい流通システム研修会」を行なったところ、多数の参加と熱心な討議が行なわれた。又、引き続き釜石大船渡地区と境港地区においては、コンサル事業を実施したが、いずれの地区においても共通の問題は、如何に産地市場の機能を強化して、効率的な商流、物流を再構築するかが重要であり、その為にはIT化が有力な手段として欠かせないとの意見が大勢を占めている。しかし、その実現には多くの問題が横たわっている事も事実である。主要な問題点は、
  1. 仕事のやりかたの問題
    水産業は種々の1次産業の中でも最もIT化の遅れている産業の1つと言われている。生鮮食品の中でも取り扱いが難しく、荷受、仲買などの流通業者も長年の勘と経験に頼る仕事のやり方からなかなか脱却できず、IT化に必要な業務の標準化が現場の第一線では遅々として進まないのが原因と言われている。総論ではIT化を推し進めようとしても、現場での各論になると、入り口で躓いてしまう例が多い。思いきった業務標準化と従来の仕事のやり方を変更する勇気が必要である。

  2. 人材の問題
    水産物の流通業界にあっても、構成人員の高齢化が進んでいるが、問題は高齢化そのものではなく、パソコンやキーボードに触ったこともないといった人が結構いて、IT化に関する話に抵抗感を持つ人が少なくない事である。
    これは結構深刻な問題で、一部には経営の中枢にいる人ほどその傾向が強いのは残念である。研修その他で基本的な事項の理解を促進する必要性が高い。
    又、なかにはIT化は市場外流通を促進して、市場の空洞化を招きかねないとの議論があるのは驚きである。ITそのものは単なる道具に過ぎず、それをどの様に使うかは使う側の問題である。市場でのセリによる価格形成は、価格の決定方法として優れた公平性を備えたものであり、IT化により市場機能を効率化して、競争力を強化する事により、空洞化を防ぎ、市場を活性化していく事が、肝要と考える。